東京大学運動会ヨット部
The University of Tokyo Sailing Team
ヨット(セーリング)は帆船がスポーツとして発展したもので、大航海時代の叡智と探求心にその起源を持ちます。 当初はその高速性や俊敏さから、海賊の追跡や偵察を目的として建造された高速帆船で、jaght(オランダ語)と呼ばれていました
ヨットは基本的に動力として風しか利用しません。セール(帆)と呼ばれる少し硬い布のようなものを用いて、揚力を発生させることで進みます。揚力によって進むので、風上方向にも進むことができるのです。ヨットに乗っている人が様々なロープを使ってセールを変形させ、かつ風に対する船の向きを調節して風を絶妙な角度でセールに流すことで揚力を生み出して走らせるので、変化する風や波に常に対応し続けることが求められます。
ヨットは1~2人乗りの“ディンギー”と、エンジンやキャビンを備えた“クルーザー”とに大別されます。 ヨットの種類は多岐にわたり、オリンピックでも10を越えるセーリング競技が行われています。
参加者が同じデザインのヨットを使用して純粋に技術を競う“ワンデザイン”のレースから、 大きさも形も様々なヨットが参加して得点をハンディキャップ方式で計算するレースまで、様々なレース形式があります。ディンギーは基本的に”ワンデザイン”のレースで行われます。
全てのヨット競技に共通するのは、ヨットが進む動力として使えるのが風のみであるということ。 セール(帆)に風を受けて「揚力」を発生させることによって、向かい風の中を進むことさえも可能になるのです。
風に強弱があるため最短のコースが最善のコースとは限らないのがヨットレース。回航マークをターニングポイントとして 向かい風のレグ(区間)と追い風のレグ(区間)が交互にやってくるヨットレースは、しばしば人生に喩えられます。
2人乗りの小型ヨット種目で活動するディンギー班は、“470”と“スナイプ”という2つのクラスでインカレを舞台に活躍しています。
“J/24”(5~6人乗り)というクラスで活動するクルーザー班は、サラリーマンセーラーからプロセーラーやオリンピックセーラーまでもが参加する社会人チームに交じって、世界選手権を視野に入れた活動をしています。2015年度には実際にドイツで行われた世界選手権に出場しました。
オリンピックでもレース艇として採用されている2人乗りヨットの花形。全長が4.7メートルであることが名前の由来で、「ヨンナナマル」と呼ばれている。トラッピーズというシステムを採用しており、クルーが全身を船の外に飛び出している。その軽快かつ豪快な姿は多くのセイラーを魅了してきた。船が軽いためスピードが出やすく、強風時の疾走感たるや他の種のヨットの追随を許さない。3枚目のセールであるスピネーカーを利用することで走りのバリエーションが豊富な470は見た目も鮮やかであり、ヨット界の中心的存在としての地位を今日も保ち続けている。
1947年からインカレの種目として採用されている伝統のある2人乗りヨット。470と違い、トラッピーズもスピネーカーも存在せず、クラシカルなデザインとなっている。スピードに差がつきにくいため、レースで勝負を分けるのは風向や風の強さ、波や潮を考慮した戦略、他艇との駆け引きといったものであり、ヨットレースの醍醐味を味わうことができる。船の重量が重いため、安定感のある走りを見せるが、船を動かす際にはクルーとスキッパーの息の合った体重移動が求められ、奥の深い艇種であるといえよう。
2人乗りの470やスナイプとは違い5、6人が協力して初めて動くのがJ/24である。東大ヨット部は仰秀という名前のJ/24を所有しており、クルーザー班を中心に活動している。舵とメインセールを操作するヘルムスマン、ヘッドセールを扱うトリマー、スピネーカーなどを扱うピットとマストハンド、船の進むべきコースを決めるタクティシャン、船の前方で動き回るバウマンといったそれぞれがそれぞれの役割を確実にこなし、互いを信頼することが重要である。2人乗りにはない、チームとしての一体感ややりがいを感じることのできるヨットである。
ヨットは海や風といった自然を相手にするスポーツであるため、安全のためにレスキューボートは欠かせない。 東大ヨット部では、「淡青」「疾風」という2艇のレスキュー体制をとり、常に安全に気を配っている。 安全面だけでなく、マークのアンカリングや風向風速の記録、動画の撮影、回航順位の記録など、練習運営の効率化の面でも必要不可欠な存在だ。