20.ヒミツ艤装公開

お待たせしました。

 

最後の更新からだいぶ経ってしまいましたが、お約束のヒミツ艤装を公開します。

今回のは、スピードアップ間違いなしです。

 

スピンフック

 

これはヒミツでもなんでもないです(^_^;)

載せてくれとのご希望を頂いたので。大変遅くなってすいません。

 シンプル。

 バテンは、ノースセール買うとついてくる、テーパーがかかったやつ。ちょうどいい堅さの部分を切り出してきて使ってます。

 先っちょのふくらみは、ビニールテープを巻いただけです。このふくらみがないと、クローズの間にスピンハリが外れちゃいます。かといってバテンに切れ込みとかいれると、スピンアップのときに引っかかっちゃって外れないことがあるんで、最終的にこれに落ち着きました。

 なるべく外側(サイドステイ寄り)に設置して、スピンハリがジブセールのリーチに干渉しないようにしています。

  

ヒミツ艤装1

 

これはなんでしょうか。(上に写ってるシートは関係ないです)

 もちろんジブハリです。(ピークロープを結ぶ)シャックルをつける部分が、4つついてます。

 ピンダウンしていくと、マストが後ろに倒れるからジブの高さも低くなって、フットがデッキについて折れ曲がりますよね?そうすると、

1.ジブの面積が減り、ジブのパワーが落ちる。

2.ジブのクリューがジブリーダーに近づく。ジブシートは斜め内向きにジブを引っ張っているから、クリューが近くなるとジブのフットが内側に引き込まれる。よってジブの上半分の開き方を一定にすると、下半分が大き引き込まれた、大きくツイストした形になる。

 ↑これを頭で考えただけじゃ、プラスの効果があるのか、マイナスの効果があるのかよく分からないし、僕も半信半疑でした。

 

 海外のレースでは、白波が立ち始めたあたりから、レースとレースのあいだに半数近い船がコーチボートの上にバタバタ横倒しになって、ジブのピークロープを上げ下げしています。

 そして小松さんが、「だまされたと思って真似してみな」と。

 

 やり方は、ピンダウンするにつれてジブのピークをあげていき、ジブのフットがデッキについて幅1cmほど折れ曲がる状態をキープします。

 そうするとあら不思議、プレーニング中にジブにぐいぐい引っ張られて前に突っ走る感じが楽しめます。そしてラルでアンダーになったときにリーダーを前に出せば、ジブをアンダーパワーようの形にできるので、角度も取れるし失速も少ない!

 ちなみにこのシステムを使うと、ピンダウンしてもリーダーの位置をほとんど変えなくて済むので、分かりやすいです。

 即採用決定!

 

 いちいちピークロープを結び直すのはめんどうくさいし、不正確です。そこでトータルプラントに注文して作ってもらったのがこれです。

 ピークロープの長さはそのままで、別の穴にシャックルを挿し替えれば、一瞬でジブの高さを変えられます。

 写真がないんですが、シャックルのネジピンの代わりに、サイドステイの固定に使うジェットピンを差し込んで、いちいち回さなくても抜いて挿すだけでOKにしてあります。、雄悟アイデアです。

 

 コーチボートがいないときは、一回ジブを下ろして高さを変えます。それでもピンダウンにかかる時間は2分未満だったと思います。

 ピンダウンだけなら、テンションを切って、左右のピンを落として、またテンションを入れるまで40秒かかりません。スプレッダー回すの合わせても1分以内。

 

 ちなみに、コーチボートに横倒しにするのは便利ですよ。リグのトラブルを一瞬で解決できます。

 やり方は、クルーがコーチボートに乗り移って、トラピーズワイヤーを引っ張って横倒しにするだけです。スキッパーはサイドタンクの内側に座ったままでイケます。起こす時に、エクステンションをコーチボートと470のあいだにはさむと折れるので注意。

 

 もう一つちなむと、陸上でも横倒しは頻出テクです。男子チームは、普通は2人でやります。なにかにつけて気軽に、ひょいっと倒してひょいっと起こします。便利です。

  

ヒミツ艤装2

 

 嗚呼、これぞ真のヒミツ艤装。

 

 ウィルモットさんの船からのパクリです。おそらく、ビクターコバレンコ氏のアイデアでしょう。

 人影まばらな時間帯とは言え、ワールド会場で船を横倒しにしたのが運の尽き。僕は見ちゃったよ~ん。運は尽きても金メダル、と。はい。

 

 パクって改良は日本人の得意技と言われてますが、僕のほうが数段イケてるシステムに進化してます。

 解説すると、ガスケットの前端です。

・ガスケットは二重になっています。

・そのあいだに、伸縮素材(ちょっと茶色くよごれた白いやつ)がサンドイッチされてます。

・ガスケット前縁は、一番上からセールリペアで止めてます。伸縮性が必要な中央部分はセールリペアでは切れるかシワになるかなので、切れ込みをいれて薄いゴム(黄色い四角いやつ)にしてあります。

 

 なにがすごいかって、

 ↑クローズのときに、ガスケット、およびセンターケース内に水が一切流れ込みません。↓

 白い部分にはかなりの伸縮性があるので、微風のセンター全下ろしから、2.5ピンダウンのセンター15センチあげまで、クローズのあいだは完全に水の浸入をシャットアウトします。

 

 そして、リーチングでも,

 これしか隙間があかないのです!

 

 さらに、プレーニング時に水圧でガスケットが内側に折れ曲がるのを防ぐため、

 ガスケットはかなりの幅で重なっていて、ガスケット後端には裏からガスケットを支持する板がついています。

 ツイゲルのセンターケースは、一番後ろから排水しやすいように工夫されているので、その部分は板もないし、重なりもなくしてあります。

 

気になる効果のほどは、

・このシステムに変えたあと、初めて乗った瞬間、ボトムが「ヌルヌル」してるんじゃないかと思った。ホンマです。

・スターンから出てくる航跡が、一目で違いが分かるほどきれいになった。水面の細かいボコボコがなくなりました。

・クローズ中、センターケースの中はほぼ静水面。ゆっくり循環しているようです。

・ド強風のリーチング中も、センターケースから水が湧いてくることはなくなりました。

 

 

 注意したいのは、これはセンターケース内の水を抜くシステムじゃないってことです。本当の水密構造にしない限り、水は入ってきます。そして最低でも、ガスケットにボトム側からかかる動的な水圧と、内側からかかる重力による水圧が等しくなる量でつりあいます。

 こいつが防ぐのは、水の流れの進入です。

 シャシーとエンジンむき出しの車に、流線型のボディをかぶせると空気抵抗が減るのと一緒です。ボディは空気の侵入を防ぐわけではないので、中に空気は入っています。でも空気の流れが、ごつごつしたシャシーやエンジンに当たらなくなるので、抵抗が減ります。

 

 

 ちなみに、白い伸縮素材の正体はストッキングです。二重にして、シリコンで目を埋めてあります。

 ここにゴムを使うと、ソッコー切れるか、ガスケットが折れるかです。滑りがいい素材じゃないとダメです。

 センターボード上のすべての点は、ピボットを中心にして円運動しています。センターを降ろしきる時、センターボード前縁は、斜め上方向に動きます。滑りが悪いゴムだとこれに巻き込まれて、センターボードと一緒にセンターケースの中に入っていってしまいます。薄ければ切れ、厚ければガスケットを巻き込んで折り目をつける。

 これに気づくまで苦労しました。

 

 

 

 しかしね~。

 微風では軽量化のためにライジャケすら脱いでコーチボートに預ける世界だからこその、異常な執念ですね。我ながらちょっとヲタ臭がします。ちょっとどころじゃね~か。

(海外では、強風でY旗があがったときだけ、ライジャケ着用義務になります。日本のライジャケ常時着用システムのほうが、まっとうだと思います。全員着てれば、ハンデないですし。誰か一人が脱ぐと、みんな脱ぎたくなるんだよな。)

 

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