ラインに並んでから、スタート約20秒前まで、スペースを守りながら加速開始を待つ時間です。
スペースを守るというと、自分の風下のスペースだけを考えがちですが、守るべきスペースはもう一つあります。スタートラインまでの距離、加速スペースです。
では守り方をみていきます。
まず、ラインに並んだら、スタートするまで左右の船の動き、とくにその乗員の動きを監視し続ける必要があります。これはスキッパーがやったほうがいいです。
同時にクルーは後ろを見て、割り込んでくる船を警戒します。
自分の風下のスペースを守るポイントは2つ。
一つ目は自分が走るために必要最低限のスペースだけをあけること。もし下の船が流れて勝手にスペースが開いていくなら、自分もそっと横流れさせてスペースを潰します。絶対に欲張っちゃダメです。
一艇が走るのにやっとなスペースしかなければ、そこに割り込んだ船はスペースがなくて走ることができないので、割り込もうとする船はいません。必要以上のスペースを開けておくと、ガンガン割り込まれます。割り込まれそうになってからベアして一気にスペースを狭めようとすると、スピードがついて前にでてしまうし、ベアによって風下にオーバーラップされると規則15で保護されないのでプロテスト沙汰になります。
またスペースが開いていると、下で待っている船がダブルタックしてスペースを奪いにきます。下の船がタックしてポートになった場合、こっちはベアしてポートスターボをかけたいところですが、こっちの動きは規則16で制限されます。下の船は2回目のタックをするまでにスピードをつける必要があり、このためのスペースを与えなければいけません。よってダブルタックをされた場合、こっちのスペースはほとんど全部奪われちゃいます。下の船がダブルタックできるほどのスペースは絶対あけてはいけません。
二つ目は、下の船の動きを真似し続けること。
下の船が流れた場合、自分も流れて、スペースを一定に保つのは上に書いたとおりです。
逆に下の船がロッキングを使ってスペースを奪いにきた場合も、自分も同時にロッキングして同じように上の船のスペースを奪い、下の船との間隔を保ちます。ロッキングするには、マストがぶつからないだけのスペースが必要なので、下の船とくっついてからではなすすべありません。
S字をする場合、まず始めにベアしてスピードをつける必要があるので、下の船が急にベアして前に出始めたら、自分も同時にベアし同時にS字をかきます。もし反応が遅れて、下の船にスペースを奪われちゃったら、もう自分にはベアしてスピードをつける余地が残っていないので、そのまま下の船にくっつくしかなくなります。
下の船の動きを、乗員の視線や動きで早めに察知することが大事です。
レベルの低いレースでは、スペースがぎりぎりのところに、無理やり割り込んでくる船がいます。とにかく怒鳴って防ぐしかないです。一艇分ぎりぎりのスペースしかあけていなければ、そこからさらにベアして防ぐことは自殺行為です。微風ならブームを一瞬押して、スペースをブームでふさぐ、という手もあります。
ぎりぎりでの割り込みは、割り込んだ瞬間に下の船から風上風下、上の船から規則15でプロテストできます。ルールも守れない、迷惑な下手糞がいたら、まわりが必ずプロテストをだして失格にし、やっていいことと悪いことを教えるべきです。みんなにとって公正で楽しいレースを作るために、必要なことだと思います。
とは言っても、大事なレースではたとえ相手を失格にしても取り返しのつかないようなリスクは避けるべきです。混雑したところやエンド付近では、スタート直前に行き場を失った船がうようよしているので、割り込まれるリスクが高まります。
では、スタートラインまでの距離、加速スペースを守るにはどうしたらいいでしょうか?
まず、まわりより高い位置で待つ=有利という考えを捨てることです。上にも書きましたが、まわりよりバウを出したところで、まわりだって負けたくないので必ず同じ高さまで上がってきます。結果的に、誰にもなんの得もないのに加速スペースを浪費することになります。
左右の船をよーくみて、必要なとき以外左右の船よりバウを前に出さず、できるなら危険がない範囲で、ほんの少し(20センチとか)だけバウを低く保ち、左右の船に安心感を与え、ラインの上げあいを防ぐようにします。
「まわりより高い位置で待ちたい」という考えは捨てたとして、それでも前に出なきゃいけないときはいつでしょうか? 自分の風下のスペースが足りないときです。このときばかりはロッキングなりS字なりで、前にでながらスペースを広げるしかありません。
ですからラインの上げあいを防ぐためには、上の船が危機感を抱いてそういった行動にでないように、上の船が走れるだけのスペースを与えてあげることが大切です。
もちろん、自分が下の船とくっつきそうなら、上の船のスペースを奪うしかありませんが。
とにかく下の船とのあいだに一定の間隔をキープして流すにしろ、上の船にスペースを与えるにしろ、下の船が下手でおとなしい船だとものすごい楽です。マシュマロは大切に。
止めるのがうまかったり、攻撃的にこっちのスペースを奪いにくる選手が下につくと、こっちも攻撃的にならざるを得ず、結果的にラインの上げあいを防ぐのが難しくなります。
ところで、左右の船よりかなり下がって待って、加速のためのスペースを残そうとする人をたまに見かけますが、超危険です。ほとんどの場合、左右の船のブランケに入れられたり、スタート直前にスペースを奪われたりで失敗します。なんであれ、自分だけ得をしようというのは大抵うまくいきません。
止まって待っているあいだに、ウエイティングラインは徐々に上がってきてしまいます。
最初にウエイティングラインにつける時に確認した位置から、どれぐらいラインが上がったか、スタートラインまでどれぐらい距離が残っているか、スキッパーの感覚で把握しておきます。
見えるなら、クルーが安全見通しや、本部船とアウターとの位置関係を見て、スタートラインまでの距離をできるだけ正確に把握し続けます。
スタートラインまでどれだけ残っているか、正確に把握しておくこどが大事です。
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