マーキング、ついてますか? 東大の学生につけろと言ってもなかなかつけてくれないし、僕も昔は小松さんにいくらつけろと言われてもマーキングなんていらないと思ってました。でも今は、乗り手の技量が同じなら、マーキングがない船はある船に絶対勝てないと思っています。
マーキングを嫌がる理由はほんとのところ“めんどうくさい”だと思いますが、それはおいといて、よく聞くのは「感覚でトリムできるからマーキングはいらない」ということです。でも感覚によるトリムというのは、走りに問題が生じてからそれを感じてトリムするので、原理的に必ずロスします。ブローに入っていったんもたついてから加速する船は、ブローに入ると同時にマーキングに合わせてトリムしロスなく加速する船に勝てません。
もう一つは、これは僕も思っていたことですが、マーキングをつけるとそればかり見てしまい、感覚を使わなくなって遅くなるということです。けどそれは素人考えというものでした。たとえばオーバーパワーのバング。強いブローが入ってリーチを開かせて風を逃がすとき、やることはバングのカムを一回きってまたかけるだけです。手元で1センチ、これで走りが変わります。こんな微妙なトリムをずっと続けながら走ってるんですが、バングについているマーキング上で2.5ミリ、そもそもマーキング上では違いが見えないので“マーキングばかり見て感覚を使わなくなる”なんてことはありえない訳です。
じゃあマーキングはなんの役に立つのでしょうか?
まず感覚というのは調子が悪いときにはほんとーにダメダメになります。でもレースで勝つには、ダメダメになってる余裕はありません。
また感覚というのは、トリムがほぼパーフェクトである場合にもっとも役に立ちます。バングがパーフェクトな状態より1センチきついのも知覚できますが、15センチゆるい場合「かなりゆるいな」ということしか分からず「バングがゆるいから引き足そう」「まだゆるいからもっと引こう」「あ、引きすぎだから少し戻そう」「あと1センチ引こう」というふうに、ジャストトリムになるまでかなりの時間を使います。あらかじめマーキングを使って±2、3センチの範囲に入れておけば、あとは感覚をつかって一瞬でパーフェクトな状態にできます。
レース中走りが悪いときに、疑う場所を限定し、自信をもつのにも役に立ちます。レースの最中にセッティングを改善しようとしてあれこれ試しだすのは、レースを台無しにするパターンの一つです。練習で時間をかけてだしたセッティング以上のものを、レース中にちょろっといじって出せる訳がないんだから。走りが悪くてもマーキングがあれば、「コントロールロープは練習で速かった位置にあるから、今はたまたま波が悪かったか、走りに集中できてないかだな。まずは走りに集中してみて、それでもダメならこのスピードが今の自分が出せる最大だから、あきらめてレースに集中しよう」と思えます。そうやってレースに集中するほうが結果はよくなります。
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これ超大事!
バングが効いていると止まれないので、スタート直前までバングはゆるめてあります。オーバーパワーのときは加速直前にバングを引きますが、マーキングを使ってぴったりクローズのテンションにするのが、スタート直後の、一番大事な競り合いで100パーセントのボートスピードをだすための条件です。
あとは下マーク回航や、上マーク回航前に次のレグに合わせてバングを合わせておくことも必要です。2.5ピンダウンでのバングmax引き~軽風のランニングでのバングmax出しまでが目盛にのるようになってます。
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直角(一番太い黒い線)、5度前進にマーキングがあり、10度前進でブロックに当たってそれ以上下ろせなくなっています。
どの状態を直角と呼ぶかはバラバラですが、うちはセンターボードの前縁と、センターケース上面が直角の状態にしてます。
直角のマーキングからセンターボード後縁に沿って計って、5センチごとに数字がふってあります。オーバーパワーのタイトリーチングでのMAXあげ(10の下の線)まで書いてあります。アンダーパワーのタイトリーチは5、オーバーヒールしてベアしなきゃ走れないタイトリーチなったら7です。クローズのマックス上げ(14センチ)は大事なので、分かりやすいように印がしてあります。
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ブーム一個分トラベラーを引きすぎたり出すぎたりしたら、走りがおかしくなります。レール上で1センチの誤差。
ロールタック後、クルーがヒールを起こしている間にマーキングを見ながらトラベラーを引いて、フラットになった時にはぴったり引ききってスピードに集中して走るだけになってます。
スタート前、下マーク回航前にもしっかり合わせます。
それと、マーキングとしてついているわけではないんですが、スキッパーがジブの形をみるときには必ず、船の中心から35センチにあるトラベラーのボルト(矢印)の真上で、デッキの高さから見るようにしています。ジブのリーチを見る視点の前後、左右、高さが毎回一定でなければ、ジブの形を覚えたり、毎回同じに合わせたりできないですからね。ちょうどいい位置にボルトがない船に乗るときは、わざわざ中心から35センチをはかって、バルクヘッドにマーキングします。
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リーダーの下にはメジャーテープ。
デッキには、ノーマルピンでの微風、オンデッキ~ハーフ、フル用の位置と、各ピンでのプレーニングできるとき、できないとき用のリーダーの位置がメモしてあります。 ジブシートを引く量の見かたは色々聞きましたが、これが一番確実かつ簡単な方法です。 シート上のマーキングと、サイドタンクに描いた目盛との関係で見てます。
走りながら風が変わったら、リーダーとジブシートをマーキングに合わせてトリムし、ジブの形を適切に保ちます。特にプレーニングできるときと、できないときが切り替わる場合、ジブの形を変えられるかで劇的に差がつきます。
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座ったり、トラピーズでたつ位置の基準です。
波があるときなどは前後バランスが重要になるので、これが役に立ちます。
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