ところで、ヒールを起こす力を大きくしたいのはなぜでしょう?クルーがフルトラにでているときのA、すなわちそのチームの身長体重でかけられる最大のAを、SCP(sail carrying power)というそうです。
ヒールを起こす力を大きくしたいのは、SCPを大きくするためです。SCPが増えれば、そのぶんセールをパワフルにしてスピードを上げたり、ブームを引き込んで角度をとったりできます。
ここで注目して欲しいのはDの位置です。ヒールすると、ハルの接水面が風下に移動するので浮心も風下に移動します。するとDの起こすモーメントが大きくなり、より大きなAおよびCと釣り合うようになります。
逆に考えると分かりやすいです。オーバーパワーでフラットで走っている状態から、シートを引き込んでAを増加させると、少しヒールした状態で釣り合います。これは、Aの増加によりヒールがおこり、それにより浮心が風下に移動、Dによるモーメントが増加し、Aの増加と釣り合ったからです。(ヒールにより風が逃げ、Aが減少した効果もあります。ヒール角が大きくなるほど、こっちの効果が大きくなります。)
SCPの増加によるメリットが、ヒール角の増加によるデメリットを上回るなら、よりヒールさせて走るべきです。
実際には5度弱のヒールで走っていると思います。完全なフラットで走っているときよりブームが引き込めるので角度がとれます。ヒールさせすぎるとブローで加速せずに突っかかる感じになります。
(アンダーパワーで、少しヒールさせるとパワーがついた感じがする、というのとは全然別の話です。この場合はCが減少しヒールが起こり、Dの増加とAの減少により釣り合います。つまりセールパワーは減少します。パワーと“パワー感”は別です。)
スキッパーがハイクアウトするのはかなり有効です。スナイプのような低いハイクアウトではなく、シングルハンドのようなひざを伸ばし気味にして、上半身を寝かせすぎないハイクアウトがいいです。じゃないと水しぶきで何も見えなくなります。
クルーはまっすぐ爪先立ちで伸びるのはもちろんですが、両腕をバンザイするとこれまたかなり効果的です。
あと、トラピーズにぶら下がってるだけだと結構寒いですからね。トレーナーかなんか着ちゃうとあったかい上に、トレーナーが水を含んで重くなってヒールが起きるオマケつきです。
この3つをやるかやらないかで、半ピン以上変わると思います。
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