11.微風のランニング

 

470の微風のランニングは真ランで走るより上って走るほうが速い、というのはよく知られている事実ですが、実際のとこどれぐらい上って走るべきなのかよく分からなくて困りますね。 クルーザーのように角度とスピードを計測してポーラダイヤグラムを作れればいいんですが、 470だと感覚と経験でどうにかそれらしく走るしかありません。というわけで、微風のランが得意だと自分では思っている川田が、 それらしく走る方法を書こうと思います。

 

上って走るのが速い理由

 

まず微風で上って走ると速いのはなぜでしょうか?

・真ランで走っているときメインセールのアタックアングルはほぼ直角になっていて、ほとんど全体が失速した状態だと思われます。そこからラフしていくと、メインセールのアタックアングルが小さくなり、メインセールに風が流れ始め、揚力が発生する。

ラフしたことにより、見かけの風向が前に周り、見かけの風速もあがる。

それにより、スピンのパワーが上がる。

以上によってボートスピードがあがり、見かけの風向がさらに前にまわり、よりベアできるようになる。

スピードアップによるプラスの効果が、ジグザグ走りによる距離のロスを上回り、VMGがあがる。

  

スピード優先

 

上に書いたとおり、微風ではスピードがつくとみかけの風向が前にまわり、スピードを保ったままさらにベアできます。

このためいったん上ってスピードをつけてからある角度までベアしてきた船はみかけの風が前に回っているのに対し、落としてスピードのない状態から同じ角度までラフしてきた船はみかけの風が前にまわらず、なかなか加速できず同じ角度で走っているのにいつまでたっても遅い、ということが起こりえます。

落とすためにはまずスピードが必要です。

ランニングから走り出したときは、ヒールパワーがぐっと感じられるところまで上り、そこでスピードがつくのを待ってからベアしていきます。スピンのフットがぱつんぱつんになる程上ってもパワーがつかないほどのベタ凪や、波で大きく失速したあとなど早く加速させたいときは、ラフに加えてセンターを下ろします。

一度走り出したら、スピードが落ちるのを未然に防ぐように気をつけます。モーターボートの引き波がきたら、なるべく波と平行な角度にして叩かれないようにします。ベアしてもラフしても叩かれそうなときは、あらかじめラフしてスピードをつけてつっきります。

  

センターはあげるか下ろすか?

 

真ランよりラフしているので、センターを上げればリーウェイします。センターをおろしてまっすぐ走るのと、センターをあげてリーウェイしながら斜め走りするのと、どっちが速いのか? 抵抗だけを考えると、フォイルとして効率がいいセンターをおろして小迎角で走ったほうが、あえて効率の悪いハルとラダーを大迎角にして走るより有利か?

実際には、他艇と並んで走りながら試した結果、センター全上げのほうがわずかに速そうです。なんでかは分かりません。

そしてベタ凪でスピンのフットがパツパツなときと、波で大きく失速したときなどスピードをつける必要があるときにはセンターを垂直近くまで下ろします。

  

ヒールかフラットか?

 

ガンネルが水面につく直前までヒールさせたほうが速いです。

ハルの接水面積が減るからなのか、重力でスピンが膨らむからなのか、リーチが開くからなのか、セールが斜めになってデルタ効果がでるのか、よくわからないけどヒールさせたほうがスピードを保ったままベアしていけます。

このとき後ろに乗りすぎるとスターンの角を引きずって遅くなります。

スキッパーがブームの風下に入ってヒールさせると風が見えないので、スキッパーはブームの風上に上半身を出したまま、クルーがなるべく中に入ってヒールさせます。

またスキッパーはティラーを押す方向に力を加えなければいけない(つまりウェザーヘルムがかかる)と思いますが、これは船がリーウェイしラダーに風下側から水流が当たるためで、いかにも抵抗になってそうですが・・・、ティラーがほぼまっすぐなまま走れるなら問題ないようです。考えてもよー分からんけどこっちのが速いんだもん。

  

角度の決め方

 

ここではクルーがきちっとスピンを張れるのを前提にスキッパーの角度の決め方を考えますが、微風ではクルーがどんなにうまくてもスキッパーがきちっとした角度で船を走らせなければスピンを張れないので、スピンが張れない原因がスキッパーにあることもしばしばです。

 

僕が微風のスピンランの角度を決めるために基準にしていることは、みかけの風向風速、メインの重さ、他艇と比較したVMGです。クルーからのスピンの重さの情報も役に立ちます。スピード感ももちろん参考にしています。

みかけの風向風速を顔に当たる風で感じるために、顔は風上(進行方向に対して横)を向き、上半身はブームの風上に出しておきます。風上を見ながら走ると、ブローや艇団の動きがよく見えるし、近くを走っている他艇に対してVMGを比較しやすいです。

メインはカムらずに、手でシートを束にして持ってます。そして常に、その角度ごとに一番メインが重く感じるところまで引いておきます。

 

まずはパワーがぐっとかかるところまでラフして数秒間スピードをつけ、そこから慎重にベアしていきます。ベアしていくとみかけの風向きが少しずつ後ろにまわり、みかけの風速は徐々に弱くなり、メインの重さも軽くなっていきます。あるところでみかけの風速がふっと落ちて、さらに少しベアするとみかけの風向も急に後ろにまわります。そこ以上ベアすると遅いです。大体そのあたりの角度で走りながら、近くに船がいるときはそれを見て、風下方向(VMG方向)に差がひらくように細かくハンドリングします。

だいたい正しい角度にのせるにはクルーからくるスピンのパワーを基準にしてもいいと思います。しかしVMGを稼ぐ細かいハンドリングは、スキッパーが他艇と比較しながらやるしかないです。それを繰り返しているうちに、「このぐらいの風速ではこのぐらいのスピード感とメインの重さ」というのを覚えてきて、他艇がいなくてもVMGをキープできるようになります。

 

ブローに入るとメインにもスピンにもプレッシャーが入りますが、すぐにベアするより、一瞬そのままの角度で走り十分に加速してからベアするほうが速いです。

ラルに入ったらそのままの角度で一瞬走って、少しずつラフしていきます。ラルに入った瞬間、艇速はそのままで真の風速が下がるので、みかけの風が前にまわりますが、このときにスピンが潰れがちです。

 

10.センターボードの働き<<トップページ>>12.サイドベンド