センターボードはクローズで横流れを止めるだけでなく、ラダーを切ったときに船の進行方向を変えたり、強風のフリーでバランスをとる役目もしています。
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センターボードは対称翼なので、船がまっすぐ前に進んで正面から水流が当たっても揚力を発生しません。
セールの横向きの力により船は前に進みながら横流れし、センターに斜めに水流があたるので揚力が発生します。
横流れが増えるほどセンターの揚力も増え、センターの揚力がセールの横向きの力と釣り合うところで船は走ります。
この横流れの量がリーウェイです。(センターだけでなく、ラダー、ハルも揚力を発生し横流れをとめています。)
センターのまわりを水が流れていないと揚力は生まれないので、止まった状態からクローズで走り出した瞬間や、なにかの拍子にスピードが落ちたときには大きく横流れします。
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(1)船が前(Aの向き)に進んだ状態から、
(2)ラダーを少しきったとします。ラダーはBの向きに力を発生してスターンを風下に振り、
(3)船のバウの向きを変えます。向きは変わっても、船全体は慣性でAの方向に進み続けているので、バウは左に向きながら船全体はAの方向に進んでいる、
“斜め走り”になっています。センターに斜めから水流が当たりアタックアングルが増すので、大きな揚力Dが発生します。
(4)この揚力に引っ張られて、船全体の進行方向が左に変わっていきます。これが繰り返されて、最終的に船はCの向きに進みます。
(車の用語を使うと、ラダーの力で自転が起こり、スリップアングルが増すことでセンターが向心力を発生し、公転が起こるって感じです。)
(2)ラダーを大きくきって船を速く回転させるとどうなるでしょうか。
(3)極端な話、船の向きを一瞬で左に90度変えたとします。すると向きが変わった直後、船はAの方向に慣性で進んだまま“横滑り”します。
このときセンターは真横から水流をうけて、この風上方向への横滑りをとめる役目しかしません。Cの方向へのスピードはゼロなので、タック直後に一から加速しなおさないといけません。
上のようにセンターを水に噛ませながらゆっくり回す回し方を“グリップ”と勝手に呼んでるんですが、グリップで回すと、
回転中も回転後も船は前(バウの向き)に進みつづけます。アンダーパワーのタックはグリップで回すとスピードが落ちないし、
タック全体をとおして多くのVMGがとれます。(風が強いときは、船をゆっくり回すと正面から風を受けて止まってしまうので、
すばやく向きを変えてセールに早く風を入れるタックをします。) 軽風のジャイブも、センターを半分ぐらい下ろしてからグリップでジャイブすると、
ジャイブ直後もスピードが残っています。ベタ凪のランジャイで止まっちゃうとすごいロスするので、スピードを落とさないのが大事です。
タックもジャイブも、グリップでまわすときはティラー先端の動きで15センチぐらいしかきりません。(ロールはしっかりかけてます。)
航跡はきれいな弧を描いて、渦も残りません。
いっぽう、中風のランジャイではセンターをあげたまま船を回し、思いっきり横滑りさせても速いです。
このときもティラーは少ししかきりませんが、センターがあがっているため横流れして、向きが変わったあともジャイブ前の進行方向に進み続けます。
こういう横流れさせる回し方を勝手にドリフトと呼んでます。(グリップとドリフト、回転中のスリップアングルの大きさが違うだけで、質的な境界があるわけではありません。)
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強風のランニングではセールトリムや体重移動に加えてラダーでバランスをとりますが、これもセンターの働きが必要です。
(1)センターを下ろして真ランで走っているときに船がアンヒールしたとすると、
(2)船をラフさせる向きにラダーをきります。
(3)ラダーによってスターンが風下に振られ、船がラフします。このとき船はまだ慣性で真下方向に進んでいるので、センターボードに風下側から水流があたります。
センターが水面下で風上向きに力を発生するので、アンヒールから立ち直ります。
ラダー自体はセンターと逆に、水面下で風下方向に力を発生し、船のアンヒールを増す方向に働いています。
これを打ち消す以上の力をセンターが発生するからアンヒールが収まるわけで、センターをおろしておかないと意味がありません。
コツは、船のアンヒールると同時にベアも起こるので、バウが風下に流れたなと思ったら、それを打ち消すようにラフする方向にテイラーを動かします。
小さく、強く、短く、ラダーをきるというより、ラダーの側面で水を軽くはたく感じです。ヒールに対しては、バウが風上に流れるのを打ち消すようにベアします。
センターを下ろしすぎる少しラフしただけでヒール沈したりするので、だいたい3分の1から半分ぐらいまで下ろします。
ド強風でほんとうに沈しそうな時にラダーで立て直すと、ガジョンやピンドルが壊れることがあるかもしれません。
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